FXにおいてサヤ取り(アービトラージ)は、異なる通貨ペアの価格変動を利用して利益を狙う手法の一つです。今回は、高金利通貨であるメキシコペソ円(MXN/JPY)と、低金利通貨の代表格であるスイスフラン円(CHF/JPY)を組み合わせたサヤ取り戦略について解説します。
メキシコペソ円(MXN/JPY)とスイスフラン円(CHF/JPY)の特徴
メキシコペソ円(MXN/JPY)
- 高金利通貨であり、スワップポイントが高い。
- 新興国通貨のためボラティリティが高い。
スイスフラン円(CHF/JPY)
- 低金利通貨であり、スワップポイントが低い。
- 安全資産としてリスクオフ局面で買われやすい。
メキシコペソ円とスイスフラン円のサヤ取り手法
1. 買いと売りのポジションを同時に持つ
メキシコペソ円を「買い」、スイスフラン円を「売り」することで、金利差によるスワップポイントを得ながら為替の「価格差」を狙います。
2. スワップポイントの収益を狙う
- メキシコペソ円はスワップポイントがプラス(受け取り)
- スイスフラン円はスワップポイントがマイナス(支払い)
- その差額がプラスであれば、為替差損が発生しても長期保有で利益を狙える
- スイスフラン円「1」に対して、メキシコペソ円は「21~22倍」になるように通貨数を調整します。
例えば、
スイスフラン円のレート「170円」メキシコペソ円レート「7.7円」の場合
170円÷7.7=22.07(レート差が約22倍)となります。
すなわち、スイスフラン円「1万通貨売り」メキシコペソ円「22万通貨買い」でサヤ取りをします。
スワップポイント収益
スイスフラン円、1万通貨売りポジション「-20円前後」(クリック365で約-5円前後です。2025年3月現在)
メキシコペソ円、1万通貨買いポジション「+22円前後(22万通貨で484円となります)」
484(メキシコペソ円スワップ)-20(スイスフラン円スワップ)=464円(1日のスワップ収益)
1セットポジションを持てば1カ月で「約14,000円」の収益となります。
3. 相関性を利用したリスクヘッジ
- 相関性の高い通貨ペアのレート差が大きくなったときに、割高な通貨を売り(ショート)、割安な通貨を買う(ロング)というポジションを取る
- 価格差が将来的に縮小することを予測し、その価格差の縮小から利益を得る
- メキシコペソ円が上昇、スイスフラン円が下落 → 利益(サヤ縮小)
- メキシコペソ円が下落、スイスフラン円が上昇 → 損失(サヤ拡大)
- 損失となってもいずれ利益となる確率が高いです。
このサヤ取りで失敗した場合、
サヤの縮小狙ったが、サヤが拡大して損失となったとします。
そのまま放置していると、スワップ金利が損失を埋めていき利益となる可能性が高いのです。
例えば、
上記に書いたスワップ収益が1カ月で「約14,000円」と仮定すれば、サヤが拡大して損失が「-6万円」で塩漬け(スワップ益、5カ月で7万円)そこからさらにサヤが拡大「-8万円」になる(スワップ益、6カ月で8.4万円)そこからさらにサヤが拡大「-10万円」になる(スワップ益、8カ月で11.2万円)こんな感じです。
そこで拡大しきったサヤは徐々に縮小を始めます。
「-10万が、―8万となり、―6万...-4万...-2万」となり、プラスに転じていきます。
仮に、そこから4カ月で利益が+10万円となった場合、運用していた期間12カ月です。
為替のサヤ利益:10万円
スワップのサヤ利益:16.8万円
合計:26.8万円となります。
もし10セットポジションを持っていれば、
合計:約268万円となる計算です。
サヤ取りでは、売りと買いお互いの損益が相殺されます。もし塩漬け状態となれば、スワップが損失を埋めていくことになります。
注意点とリスク管理
1. 金利差の変動
通常スワップポイントは日々変動するため、必ずしもプラスの収益になるとは限りませんが、異通貨サヤ取りでは、スワップがマイナスになることは考えにくいのです。
2. 急激な相場変動
ロスカット対策として
- 基本的には証拠金維持率を高めに設定する(レバレッジを低めに設定)
- 両建ては、同一口座で保有する(売りと買いの損益が相殺され証拠金維持率が下がりにくい)
まとめ
メキシコペソ円とスイスフラン円を利用したサヤ取り戦略は、スワップポイントの利益と為替の利益を狙い、リスクヘッジのバランスを取りながら運用できる魅力的な手法です。しかし、急激な相場変動リスクなどに注意しながら慎重に運用することが重要です。
長期的な視点で安定した収益を目指す場合、この手法を活用してみるのも良いでしょう。